最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 最近は恒例になりつつあるこのやり取りを、周りの人たちは苦笑しながら見守っている。
 私の後任に名前が挙がった時から、彼女は一貫して固辞してきたけれど、他に候補がいなかったので半ばむりやり話が進んでしまったのだ。元はといえば私が彼女を推薦したのが始まりなので、彼女の悲壮な様子を見ると少し心が痛む。でも茉奈ちゃんの気の強さ、社長と相性いいと思うんだけどな。

「最初は室長がサポートしてくれるし。社長だって意外と気を使って……」
「それって里香さんだからでしょ? 一般女子に使える気なんて持ってるんですか?」
「いやいや社長も随分優しくなりましたよね」
「そうそう、昔に比べたら今なんて全然」

 先輩の美智(みち)さんが笑いながら言った言葉に、周りも次々に同意する。あの頃はね、なんて、昔を懐かしみ始めた。

 そう、あの頃は、本当に酷かった。
 
 私が初めて彼に出会った、まだ彼に恋をするなんて思いもよらなかった、あの頃は……。
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