最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 前日になってもなにも話が出ないので、意を決して私から声をかけた。せめてどんなお店に連れて行ってもらえるのかくらい聞いておかないと、どんな服を選べばいいかわからない。一人空回ってキラッキラの服を着て、それこそ場末の居酒屋だったら目も当てられない。

 終業間際、社長も一息つきたくなる頃を見計らって、お茶と共にお土産でいただいたお菓子を差し出す。

「あの。明日のことなんですが」
「明日?」

 小ぶりのお饅頭にかぶりついた社長は、心当たりなどございませんと言わんばかりの返事をしてくる。
 え、もしかして忘れてる?

「食事のこと?」
「そうですそうです」

 ああびっくりした。食事の約束自体、白昼夢でも見てたのかと思った。

「あのですね。その、こちらも多少準備などもございまして。もし、よければその、どのような類のお店に行かれるのかを教えていただけると……」
「準備?」
「ええとその、TPOという言葉もございますし、服装などを決めるのにですね」
「ああ。別になにも用意しなくていいよ。そのままで」

 あっさりとそう言われた。
 はい。そのままで。

 一気にどーっと脱力してしまって、気取られないように早々にデスクに戻る。そうですよね、相棒ですもんね。仕事帰りに一杯ひっかけるようなノリですよね。あーアホくさ、この数日のトキメキを返せ!

 その夜の私のテンションはダダ下がりだった。エステもキャンセルしてやろうかと思ったけど、せっかくだし受けに行く。思いっきりリフレッシュして、このくさくさした気持ちを少しでも和らげねば。
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