雨、晴れ、曇り、雪
黒い猫
歩道の端に項垂れている黒猫がいた。
どうやら自分とは別の生き物に
いいように扱われた挙句、
ポイッとされたようだ。

"どうして私は黒いの、
 白に生まれてくればもっと…"

みかねた神は
彼女を白に変えた。
白猫はとても感謝し、一言
"ありがとう"
というと自分を捨てた生き物の元へ戻って行った。
必死だったので
道中に汚れて茶色くなっていることに気が付かなった。
あの生き物の元に着き、
一度鳴いてみると、あの生き物は
『汚な。』
とだけ言い放ち彼女を無視した。
彼女はまたあの歩道の端に行き、
また一人項垂れていた。

"どうして私は白にしたの、
 最初から茶色にしていれば…"

それを聞いた神は
彼女を茶色に変えた。
すると彼女はお礼も言わず、
走ってあの生き物の元へ行った。
そしてまた一度鳴くと、今度は
何も言わず見向きもしなかった。
そして、また彼女はあの歩道の端へ行き、
また項垂れた。

"どうして私は茶色なの、
 黒のときはもっと…"

すると神は、
彼女を黒に変えた。
彼女は喜びもせず、
感謝も口にせず、
また走ってあの生き物の元へ向かって行った。
そこで彼女は、
あの生き物の元に
彼女とは別の猫がいるのを見てしまった。
彼女は今まで以上に落ち込み、
歩道の端でこう願った。

"いっそのこと消えてしまいたい"

すると神は
彼女の姿と声を消した。
そして、神はそれ以降
彼女の前に姿をみせなかった。

彼女がどれだけ走っても、
どれだけ鳴いても、
誰も彼女に気づかず
そのたびににまたあの歩道の端で
項垂れた。

死ぬまでの間、
鳴いては項垂れ、
泣いては項垂れを
繰り返していた。

死ぬ間際
一人の少年が彼女にこう言った、
「大丈夫?」
彼女はか細い声で短く鳴き
眠るように目を閉じた。
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