死席簿〜返事をしなければ即、死亡


でも、どうやって?


誰かが代表で教室を出て、放送室に走ったとする。でもその間に、今井に名を呼ばれたら?この教室から放送室までは最も遠い。もしこっそり抜け出せたとしても、居ないことに今井が気づかないはずがない。


八方塞がりだ。


もう、最後の手段しかないか?


まず、今井を殺す。


だが、殺すにせよ、あいつはナイフを手放さないで用心しているはずだ。


そのあと放送室に駆け込んで、あいつの仲間をぶちのめす。


それしかないか?


洗剤で血を洗い流し、最後に顔を洗った。


頭をすっきりさせて、今井の裏をかかないといけない。


となるとやっぱり【あれ】しかないか?


「雷人、大丈夫?」


トイレを出ると、洋子が心配そうに待っていた。


「ああ、大丈夫だ」


「ほんとに?」


顔を覗き込んでくる幼馴染は、洋子だけには俺の考えがお見通しだ。


「まさか雷人、違うよね?」


「心配するな」


「心配するに決まってるじゃない。私、私__雷人が居なくなったら__」


「大丈夫だから」


つい、洋子の手を引き寄せてしまった。


胸の中におさまった体は、思ったより細い。身をよじって俺の腕から出ようとするのは、洋子なりの反対表明なのだろう__。


それでも俺は、強く抱きしめた。


「あの、ちょっといい、かな?」


そう言って、遠慮がちに声を掛けてきたのは【水口智花】だった。


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