死席簿〜返事をしなければ即、死亡


「ひどい」


痛々しげに呟く知念さんの目から、涙が溢れた。


やっとのことで包丁を突き出し、辛うじて立っているその姿は、あまりに脆くて儚げで__。


「うそばっかり!自分が助かろうと思って、そんなうそ言ってるんでしょ⁉︎」


「や、矢井田さん‼︎」


「私は騙されないから!」


一度は引いた力が、前にも増してのし掛かってくる。


スタンガンが放つ、宙を引き裂く風が口元を過(よ)ぎった。


「待って!私の話を聞いて!そもそも、ジャクソンがもう少しで先生に襲いかかろうとした時、咳をしたのは知念さんよ!」


「そ、そんなことで【うち】を疑うの?それにうちは、ちゃんと謝った」


「確かにあの後、謝った。でもそれは、みんなの戦意を落ち着かせる結果になって、それで先生の不意打ちを受けたわ」


「そんなの、なんの証拠にもならない!」


知念さんが独特のイントネーションで猛抗議する。


「そんなこといって、片平さんが先生の協力者じゃないの?」と。


どこか物腰が柔らかい喋り方は、同情を誘うのに効果的だ。


「ほらやっぱり、私を騙してる!」


「矢井田さん、待って!」


「もう死んでよ!」


「違うの、あの2人は付き合ってる!先生と知念さんは恋人同士なのよ!」


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