死席簿〜返事をしなければ即、死亡
うっ‼︎と呻いた矢井田さんが、床に転げ落ちる。
刺された左脇腹から、どんどん血が広がっていくのが分かった。
「うちが生き残るから、2人には申し訳ないけど」
血で染まった刃先を弄(もてあそ)ぶ知念さんはもう、震えてなどいない。
そうすることが正しいかのように、どちらから刺し殺すか「神様の言う通りー」と歌っている。
「先生が教え子に手を出すなんて、そんなの、そんなのダメじゃない!」
とにかく時間を稼ぐんだ。
怒らせてもいいから、知念さんの呑気な歌が終わらないうちに、なにか手を考えないと__矢井田さんはうつ伏せで動かない。肩で息をしているが、その息遣いは心細い。
「確かに生徒と付き合うのは、教師として御法度だ。でも僕たちは、巡り会うべくして出会ったんだ」
今井先生と知念さんが、視線を絡める。
「ど、どんな理由があっても許されることじゃない!」
「まだ人を愛したことがない片平には分からない。先生と知念は、出会った瞬間から恋に落ちた。クラスに馴染めない転校生を励ましているうちに、お互いが惹かれあい、愛し合ったんだ」
教師と生徒という枠組みを乗り越えた2人が、見つめ合っている。
かける言葉もない。
ただ単に、子供を洗脳しただけじゃないのか?教師という肩書きを、いいように転校生に刷り込んだだけのこと。
それを愛だなんて__。
「__いうとおりー」
知念さんの歌が終わった。
その刃先を、私に向けたまま。