死席簿〜返事をしなければ即、死亡
「それでは、世良が有罪か無罪か陪審員に__」
そこで言葉を止めた今井が、教壇という裁判長席から躍り出てきた。
世良の前までやってくると、わずかに首を傾げる。
「泣いているのか?」と。
その通り、世良は泣いていた。
両目から、とめどなく涙が溢れている。
「友達を裏切っていじめたくせに、今頃になって泣いて命乞いか?泣きたいのは、和久井のほうだろう?」
小馬鹿にしたように、生徒の頭を小突く。
「まぁ、いいだろう。自己弁護の機会をやろう」
猿轡を乱暴に取ると、世良は真っ先に隣のジャクソンに毒づいた。
「こ、こいつのせいだ!俺はこいつに脅されて、仕方なく進のことをいじめたんだ。裏切る気なんてなかって。進、信じてくれ!ジャクソンに、いじめないと殺すって脅されて__」
「じゃ、本意じゃなかっていうのか?」
和久井進の顔が一瞬、柔らかくなった。
自分と同じように、もし脅迫されてやむなくいじめていたのなら?
裏切られた悲しみと、まだ信じたい思い。
「そうだ。進、信じてくれよ!」
「__わかった」
短く答えると、それ以上、和久井が口を開くことはなかった。
「それじゃ、陪審員に判断を委ねるとしようか」
今井が俺たちに向き直る。
「世良が有罪だと思うものは、手を挙げなさい」