こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
昨夜の最上さんを、私は初めて怖いと思った。うっかり木崎課長の名前を出してまたあんなふうになったら、と思うと結局自分で気持ちを整理しなければならないのだった。

マンションのエントランスが近づくと、誰かが出てくるのが見えた。

最上さん?

エントランスまで数十メートル。声をかければ気がつく距離だ。彼の名前を呼ぼうと口を開こうとしたそのとき。

車体の大きな黒い高級車が最上さんの前で止まった。そして運転席から髪の長い女性が下りてきて、嬉しそうに最上さんの首にその腕を回した。

だ、誰……?

咄嗟に物影に隠れてその様子を窺う。
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