こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
その女性は日本人女性の平均身長よりはるかに高く、一七〇センチくらいで腰も細くモデルのような体型だ。さらりとした黒髪が翻る。横顔だったけれどすっと高い鼻が印象的な色白の美人だった。彼女は軽く最上さんの頬にキスをすると、車に乗るように促した。なにか会話をしているようだけれど、不鮮明で内容まではわからない。

ショックだった。

私はその場に棒立ちになり、車が過ぎ去っていくまで動けなかった。

最上さんは彼女に対して微かに微笑んでいるようにも見えた。その笑顔を向けた相手は私じゃない。そう思うと、じわじわと悲しみが湧いてぎゅっと唇を噛み締めた。

なんなのこの気持ち……。

悲しみのほかに得体の知れないモヤモヤとした感情が私を揺さぶる。

今まで最上さんのことを拒絶していたくせに……私、嫉妬してるんだ。

なんて自分勝手なんだろう。

それでも彼に対して溢れる気持ちを押さえることはもうできない。引き返すこともできない。けれど、それでも最上さんを信じていたい。

やっと好きって思えたのに……なにもかも遅いの?

どうすることもできないまま、気がつくと頬に一筋の涙が伝っていた。
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