こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
今までこんなにもひとりの女に執着したことはない。
搔き乱された心を振り払うように、俺はハイボールを一気に飲み干すと同時にポケットの中のスマホが鳴った。

「もしもし」

『あ、お兄ちゃん? 私』

「絵里奈か」

最上絵里奈は俺の三つ下の妹で、アメリカで企業内偵調査会社“テルレス”を設立して今は夫とロサンゼルスで暮らしている。
テルレスは主に横領、着服、情報漏れや他社との癒着、その他の社内不正を調査している。全国に支社を展開し、日本にも支社があって一週間前に東京出張のため帰国していると連絡があったばかりだ。

『この前頼まれてた件だけど、会って話したいから明日時間もらえる?』

「ああ。わかった」

『じゃあね』

忙しいのか、絵里奈はそれだけ言うと手短に電話を切った。
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