真実(まこと)の愛

「うーん……甘いな、それ。そんな立派なおうちだったら、結婚なんてしたら、きっといろいろと面倒なことがあるよ?」

美咲が眉根を寄せて鼻白む。

「うちのような家なんかでもあるもん。
和哉の両親って離婚してるんだけど、それぞれ再婚して新しい家庭を持ったもんだから、和哉とはすっかり疎遠になってたらしいのよ。
ところが結婚したとたん『おまえは魚住家の長男だから』って、お義父(とう)さんの方から急に法事なんかに呼び出されるようになっちゃったんだよ?
まぁ、(ふる)い土地柄、そういうものなのかもしれないけれど」

「げっ、それって智くんの母方の伯父さんのことですよね?
……やだなぁ、うちも呼ばれるようになるのかなぁ?」

稍の顔がとたんに曇る。

「それでなくても、なるべくお義母(かあ)さんには会わないようにしてるのにぃー」

……結婚って、ずいぶん厄介ねぇ。fairy tale(おとぎばなし)のように、すんなりHappily ever after(めでたし、めでたし)ってわけにはいかないみたいだわ。

と、麻琴が思ったのもつかの間。

「……でも、それだけじゃないよね?」

美咲が上目遣いでじーっと麻琴を見た。

「え、えっと……」

麻琴は思わずたじろぐ。
心の奥を見透かされるような不思議な瞳だった。


「麻琴ちゃんってさ……もしかして、男の人から追いかけられたら、冷めちゃうタイプなんじゃないの?」

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