真実(まこと)の愛
Chapter6

➖❶


テレコムセンターに入居する会社からほど近い、ドイツ発祥の自動車ブランドが営むカフェで、麻琴は流線型の美しいフォルムの車を眺めながら、彼を待っていた。

「……麻琴、ごめん、待たせたな」

やや遅れてやってきたその人は、麻琴の正面のチェアに腰掛けると、オーダーを取りに来た店員にアイスコーヒーを頼んだ。
すでに麻琴はエスプレッソを飲んでいる。

毛先を遊ばせたアッシュグレーの髪にオリバーピープルズの五〇五のメガネを掛けた彼は、モデルばりの長身の身体(からだ)に杢グレーのVネックのコットンニット、そして黒いジャケットと黒いアンクルパンツを纏っていた。

いかにも何気なく見える着こなしだが、実は頭のてっぺんから足の先までこだわり抜いたコーディネイトであることを、麻琴は知っていた。

「ひさしぶりだな、どうしてた?
ずいぶん前に東京に戻ってきてたくせに、ずっと音沙汰なしだろ?
……おれは、きみに逢いたかったのにさ」

麻琴の瞳をじっと見つめて、そんなことを(ささや)くこの男は……

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