クリスマス・イルミネーション
12月2日

日曜日、桜木町の改札で待ち合わせをした。

「お待たせ」

先に待っていた和希の前に現れた愛由美は、嬉しそうだった。

水野が観たいと言っていた映画を、翌日には愛由美を食事に呼び出し、今日の約束をした。

「本当にありがとう! 観たかったの!」

愛由美は鼻息も荒く言った。

「それは良かった」

和希は本当にそう思った。

「尋子誘うのも面倒でさ、大抵レンタルで済ませちゃうけど、久々に映画館で観る! 嬉しい!」

(相変わらず、馬鹿がつくほど素直だな)

和希は内心悪態をつきながら言った。

「予約した時間まで少し早いけど、行くか」
「うん」

指を絡ませるように手を繋ぎ、二人で歩き出す。
汽車道を通り、ワールドポーターズにある映画館へ向かう。
映画を観ている間もずっと手を繋いでいた。

(……なのに、なんで「そんな関係じゃない」なんだ)

映画をキラキラした目で観ている愛由美を見て思う。

和希の視線に気付き、視線を合わせると、とても嬉しそうに微笑んだ。

映画に興奮しているのか瞳は潤み、頬は昂揚してたように赤みが増している。
薄暗いのも手伝って、色っぽく見える顔がそこにあった。

(そんな顔、俺以外に見せるな)

握った手に力を込めたが、愛由美にはその意味が判らなかった。

映画が終わると、食事にした。

「凄い面白かったー! あ、映画のお金!」

食事を注文し待っている間、愛由美が言った。

「いいって。この間の箱根も全部出してもらったし」
「だって、車も出してもらって、高速道路も」
「たまにはいいじゃん」

和希は頬杖をついたまま言った。

「俺も無一文なわけじゃない」
「うーん……じゃあ、お言葉に甘えて……」

愛由美は渋々言う、もちろんこの食事代は払うつもりだ。
和希は頬杖をついたまま聞く。

「来週も逢える?」
「うん?」
「またドライブでも」
「でもそれじゃ、晴真が疲れない?」
「俺が行きたいんだからいいじゃん」
「うん、じゃあ……何処か行きたいとこがあるの?」
「宮ヶ瀬」
「みやがせ?」
「行ったことない? 毎年、大きなツリーを飾るんで有名なんだ。今年も先週から始まってるんだ」

よく家族で見に行った、とは言ってはいけないと思った。

「そうなの? 大きなツリーかー、見てみたいな、楽しみ」

愛由美は子供のように嬉しそうに微笑んだ。
< 23 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop