最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~

「だいたい、勝手に人の家に侵入して、池の鯉を窃盗して、挙句、人を勝手に妻扱い。あれですか、新手の結婚詐欺ですか? そもそも自分はドラゴンだなんて、正気ですか? 頭、大丈夫?」

 病院行きますか? も追加して言っておいた。

「貴様、それが七龍王――、煉獄の暗黒龍に対する物言いか。無礼にも程があるぞ!」

 私の煽りで、エヴィエニスの額に青筋が浮き出た。
 声を荒げた彼の口元に、尖った犬歯がギラリと光った。
 立ち上がった彼の背の高さも相まって、中々の凄みが出ている。
 だが、しかし。私がコミュ障の喪女だからって、凄めば黙ると思ったか? 
 甘いなぁ。このイケメン、チョロ甘だよ。

「ほー、全裸の変質者がよく言うよ。じゃあ、煉獄の暗黒龍であるエヴィエニスさんはー、なーんで人間の姿してるんですかね? なんで、ドラゴンの姿してないんですかー?」

「そ、それは……」

 痛い所を的確に突かれたからか、言葉に詰まらせ、語尾を濁す。
 この反応――、彼の唱える『自分はドラゴン説』も、いよいよ眉唾ものになりましたな。
 屈強な大男が喪女の言葉攻めに押されているんだぜ?
 なんと言う優越感! 堪らないね。
 私すら知らなかった未知なる自分の一面が、こんなタイミングでお披露目されてしまうとはな。
 世の中、何が起こるか分からない。
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