最強の暗黒龍は喪女にゾッコン ~VRMMOの裏ボスが子作り前提で求愛してきました~
「ヒナタの寝顔が、あまりにも苦しそうだったのでな。幼い頃、寝つきが悪い我に、父上がしてくれたのを思い出した」
「その優しさは一体、どこから湧いてくるの。やっぱり筋肉から? 主張が激しい胸筋からなの? もっと、傍若無人で凶悪面なドラゴンらしく、乱暴働いて良いんですよ? もちろん、私以外にですけど」
「お前は、我をなんだと思っておるのだ」
テーブルに突っ伏した私に、上から低い声が降ってくる。
ため息をつくまでには至らなかったが、あきらかに呆れが混じっている。
なんだと思っている? と聞かれたからには、思いつく限りでも100個くらい挙げられそうだ。
しかし、流石の私もツッコミ役を続けるのは疲れた。
テーブルに額をつけたまま、「暗黒龍様でぇす」と弱弱しく言葉を返す。
「話を続けてもよいか?」
「本当は良くないんですけど、どうぞ。……んー、いや」
私の奇行を目の前にしても、エヴィエニスは冷静だ。
これ以上、突飛もないことを聞かされても私には驚く余力がない。
ここからは左耳から聞いて、右耳から流して、脳味噌には何の情報も蓄積されないスタイルで暗黒龍様の主張を静聴しよう。
と思ったが、その前に――。