ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~
「ちょ、ちょっと本当に大丈夫?」
「大丈夫。それに全部、お前も好きなものだろ?」
たしかに、焼肉店に行くと頼むものばかり。
言葉で返事する代わりに、お腹がぐうっと鳴ってしまった。
「腹は正直だな。でも、味覚が似てると楽だな。安藤さんの言う通り、俺たち、合うのかもよ?」
上目遣いに微笑まれて、悪寒を感じ、体を手で包み込む。
「なんだよ、その反応は」
「だって……」
これまでの付き合いの中でこんな笑顔を見せられたことないから、裏があるようにしか思えない。
「なにを企んでるの?」
「企む?なんの話だ?」
首を大きく傾げた実松くんの仕草が、しらじらしく見える。
だからオブラートに包まず、ストレートに聞くことにした。
「実松くん、私のことなんて好きじゃないでしょ?」
語気を強めに言い終えた直後、店員さんがビールを運んで来た。
「お待たせしました」
さすが、高級店。
黒服の男性店員はなにも聴こえていなかったかのように、上品な笑顔を浮かべたまま、会釈をして去って行った。
「タイミング悪すぎ。俺、この店の常連なんだからな」
「ごめん」
実松くんがこのお店をよく利用しているのは言われなくても気付いていたのに、声を荒げてしまって、印象悪くしてしまった。
「配慮が足りなかった。ごめんなさい」
頭を軽く下げて、もう一度謝ると、ビールのグラスが差し出された。
「いいよ。それより、とりあえず乾杯」
「あ、うん。乾杯」
カチンとグラスを合わせ、ビールを一口飲む。