ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

「『恭子たちは行くの?』だって」


メールをそのまま読むと、実松くんの眉間にシワが寄った。


「どうしたの?」

「いや。そいつ、人の彼女を名前で呼んでおきながら、婚約者は苗字で呼ぶんだな、と思って」


それはきっと志摩くんが及川さんを名前で呼ぶことに照れくささがあるからだろう。

及川さんは及川さんって呼んでいたから、今更名前で呼ばれてもピンとこないし。


「俺も今日から千葉呼びはやめて、恭子って呼ぶ。それと、ブライダルフェアも行くぞ」

「なんで?私たち、関係ないでしょ」


名前呼びは良いにしても、ブライダルフェアは予定もないのに行ったら失礼だ。

でも実松くんは一度言ったことは取り消さない。

頑なに行くと言う。


「なんで?」

「俺たちの仲を婚約者に見せれば、万が一破局しても、恭子に変な恨みを持たなくなるだろ?それに志摩にも。恭子は奪わせないって牽制しなきゃならないからな」


独占欲の強いのは及川さんだけではないようだ。

もっとも、私の場合、実松くんからの独占欲を嬉しいと感じる。

愛されてると実感出来るから。

志摩くんもそう思えればきっと上手くいくのに。

ふと、そう思った。



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