ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

「わ。美味しそう。フレンチなんて安藤さんの結婚式以来だよ」


早く食べたくて、シャンパングラスを手に取り、実松くんに向ける。

でも、実松くんはなにか閃いたかのように、一度持ち上げたシャンパングラスを机に置いた。


「そうだよ、結婚式だ」

「何の話?」


少し興奮気味の実松くんに冷静に聞き返すと、早口で答えが返ってきた。


「俺の知り合いにホテルで勤めてるヤツがいるんだけど、そこのブライダルフェアに来いって誘われてたんだ。もし、志摩たちがまだ式場とか見てなかったら、ブライダルフェアに参加するのってひとつの手じゃないか?」


実松くんはどうやら安藤さんが結婚式を挙げたことで気持ちが吹っ切れた、と言っていたことを参考にしているようだ。

なるほど。

一理ある。


「模擬だとしても、実際に式を見て、ドレスなんかも試着させて貰えたら考えが変わるかもしれないもんね」



うん。いいかも。

早速、スマートフォンを取り出し、志摩くんにメールを打つ。


「あれ?でも、なんて誘えばいいんだろう」

「『知り合いがブライダルフェアに参加してくれる人を探しているんだけど、どう?』って誘えば?」


喧嘩中って聞いているのに、いきなりブライダルフェアなんて、お節介というか、空気読めないというか。

でも結婚を予定しているのは事実。

ほかに思い付くセリフもないし。

実松くんの言われた通りに思い切って送ると、デザートが運ばれてきた頃に返信が来た。

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