ただのワガママでしょうか。
「雪ちゃん、ライン来てた?」

自販機の横にある、椅子に座るよう、誘導しつつ小関さんは聞いてきた。

「野村さんのことですか?まだ、スマホを見てないですが、お昼終わりまでにはなかったですよ。」
りんごジュースの蓋を開けつつ答えた。

「雪ちゃん、昨日はどうだったの?結構イイ感じだった?」

正直に言って、何も教えたくなかった。
小関さんは優しいし、職場でも信頼はできる人。
でも、私にとっては、仕事の先輩でそれ以上でもそれ以下でもなかった。

「とくには何もなかったです。少し帰り道にお話ししたくらいです。」

小関さんは、明るくて、誰とでもすぐに打ち解けられ、それなのに、
自分の意見はずばっと言え、でも嫌われない。
羨ましくて羨ましくて、憧れの先輩。

だけど、何かを話したいそう思えない。たぶんそれが私の、壁なんだと思う。

「ライン来るかな?でも野村さんだった?は雪ちゃんに気があるんじゃないの?
じゃなきゃね~」
私の腕をつんつんしながら、ヒューヒューと言わんばかりのテンションで、自分のことのように楽しそうで、そんな小関さんに、クスッと笑ってしまった。

「なんだよー。雪ちゃんのバカ」
「馬鹿とはなんですか。馬鹿とは。確かに否めないですけど。」
そう言ったら、小関さんが大笑いして、
「そういう雪ちゃんが好き」
そう言ってくれた。

「私も小関さんが好きです。いつもありがとうございます。」
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