ただのワガママでしょうか。
「雪ちゃん、今日ご飯いこーね」
友達も、彼氏もいない私に、予定などあるわけもなく、
最初から拒否権のない、決定事項に
なんで、今日の今日言うのか、と疑問に思いつつも
笑顔で返事をした。

定時で上がれるように、意識していたにもかかわらず
私の仕事は客商売であり、
閉店時間だというのに、まだ帰ろうとしてくれないお客様に
説明に説明を重ね、
「一度ご自宅に持ち帰り、検討してみてはいかがでしょうか。」と
投げてみたものの、
全く帰る気のない、なんなら、ここへ話し相手を求めて
来店しているような、そんな風にも受け取れるようなお客様で、
これはあと、30分は難しいかなと諦めている時に
あの、我らが大先輩、松木さんが助けに入ってくれた。

「助けてくれて、ありがとうございました。すみませんでした。」
頭を下げながら伝えると
松木さんは、大丈夫よと言いながら背を向けて自分のデスクへ座った。
先輩の姿に、尊敬やカッコ良さ、自分の無力さを感じた。
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