伝説に散った龍Ⅱ
Ⅸ/近藤爽











──────────…





side芹那









「ーー点滴を打ちますので」



「はあ、」



「しばらく中待合でお待ちください」



「わかりました」





女性の先生を希望した。



伊織が今どんな状態なのか



医療の知識など微塵もない私には予想がつかなくて。



もし仮に裸体を晒すことになった場合
男の先生ではなんだか不憫だと思った。



…幸い、裸体になることはなかったけれど。





「あの、病室に入ってもいいですか?」



「しばらくしたら看護師が呼びますので」



「すみません、ありがとうございます」



「では」



「あのっ、」



「はい」



「何か、変なものを飲まされたりは…」



「していませんよ。もしそうならすぐ警察を呼んでます」






不安げに声を揺らした私に、先生は緩く笑って答える。



私はその答えにありがとうございましたと頭を下げ、



足早に待合室に戻った。



ちょうど、彼等が待合室まで来たタイミングだった。



…ナイスタイミング。



もう少し彼等が早く着いていれば
もう少し面倒なことになっていたかもしれない。
















「芹那、」



「…烈」



「……無事か?」





烈はそう言って、申し訳なさそうに眉尻を下げる。



烈も近藤も桃も、世那も



度を超えて大きな怪我はしていない様子。



良かった。
みんな無事で。





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