伝説に散った龍Ⅱ
棗の気配が近づく。
それは確実に、私の方へと。
───考えろ、私。
見つかっちゃダメだ。
次棗のあんな表情を見てしまったら
棗の、あんな声を聞いてしまったら
自分がどんな行動を取るか、私にも想像がつかない。
このピンチ。どう凌ごう。
まだ完全に機能していない頭を必死に動かす。
頭は「逃げなきゃ」と考えるのに
それを拒否するように眼からは涙は流れて
もしかしたらもう限界なのかも、と
何となくそう思った。
「───、っが、っ」
なんとか覚悟を決めて棗の前に飛び出し、鳩尾に一発を入れる。
気絶してくれ、と握りしめた拳を叩きつければ
棗は、ほどなくして意識を飛ばした。
「…ふう」
そんな棗を見て安心する自分に
吐き気がする心地がした。