アイツが仕掛ける危険な罠=それは、蜜色の誘惑。【完】

くぅ~正座している足が辛い。膝枕って見た目はほのぼのって感じだけど、こんなにヘビーだったんだ。それに、夕飯食べてないからお腹空いてきた……


そう思ったらもうダメだ。正直な私のお腹が豪快に鳴り出し、その音で目を覚ました並木主任がキョロキョロしながら起き上がる。


「なぁ、今変な音したよな?」

「そ、そうですか? 夢でも見てたんじゃないんですか?」


自分のお腹の音だなんて恥ずかしくて口が裂けても言えない。なんとか誤魔化して立ち上がろうとしたのだけど、いかんせん足が完全に痺れて全く感覚がない。そんな状態だから体を支えることができず、膝から崩れ落ちる。


「わわっ!」


成す術なくソファーに座った並木主任に向かって倒れていく。咄嗟に彼が腕を広げて受け止めてくれたが、結果的に並木主任を押し倒す形になり、気付けば、私の胸が彼の顔面を覆っていた。


「うぐっ……息が……」

「す、すみません」


並木主任が苦しそうにもがくのを見て離れようとソファーの背もたれに手を付くも、足がジンジン痺れて踏ん張りが利かず、彼の股の間を潰れたカエルみたいにズルズルと滑り落ちていく。そしてそのまま床にペタンと座り込んだ。


痺れた足を擦りながらオドオドと顔を上げれば、なんと超至近距離に並木主任の股間が……


今度はカエルが潰れたような声で「げっ!」と叫ぶと、後ろのドアが開く音がして翔馬の「うおーっ!」という雄叫びが居間に響いた。


何事かと振り返ったのと同時に凄い勢いでドアが閉まり、ドアの向こうから翔馬の裏返った声が聞こえてくる。


「し、失礼しましたーっ! どうぞ続けてください!」

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