フルール・マリエ


「もう、いいか?」

「申し訳ありませんが、下も合わせて頂きたいので、サイズを教えて頂けますか?」

旦那さんが踵を返そうとするのを慌てて止め、パンツのサイズを確認して黒のパンツを旦那さんに渡してなんとか試着してもらった。

その間に奥さんには今、1番気に入っているドレスを着用してもらう。

「変じゃないかしら」

奥さんは恥ずかしそうに体を縮めながら旦那さんの反応を伺った。

「年甲斐もなくウエディングドレスか」

「お父さんっ。酷いよ。お母さん、ウエディングドレス着るの夢だったって言ってたのに」

「店内で声を荒げるな。迷惑だろ」

「荒げさせてるのはお父さんのせいでしょ」

「すみません、旦那様。裾をお直し致しますので、一旦試着室によろしいですか?」

周りのお客さんも物々しい雰囲気に動揺しているようだったので、ひとまず適当に理由をつけて引き離すことにした。

旦那さんの袖や裾を確認していると、旦那さんは騒がしくして申し訳ない、と謝った。



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