フルール・マリエ


「ウエディングドレスってのは、若い子が着るものではないんですか」

「そんな事はありませんよ。着たいと思う女性が着るものです。そのために、様々な種類がありますよ」

「でも、周りにいたお客さんは皆20代くらいでしょう」

「今いる方はそうですが、浜崎様と同年代のお客様も来店しますよ」

「・・・夢、なんて20代の頃だけだと思ってました」

娘に言われたことを旦那さんなりに気にしていたようで、低い声で呟いた。

「付き合っていた頃に言われたなぁ、と。妊娠がわかって、結局叶えてやれなかったんですがね」

「今からでも、遅くないですよ」

「20代の頃の夢ですよ?」

「ウエディングドレスを着た奥様、とても嬉しそうにされてましたよ。夢は諦めなければ無くなりません」

旦那さんにどう伝わったのかは表情からはわからなかったが、小さく、そうですか、と呟いて何かを考えている様子だった。


改めて奥さんと対面した旦那さんは、奥さんのウエディングドレス姿を見つめた。

その視線に耐えられなくなったのか、奥さんは私に助けを求めて来るように、口を開いた。

「あの、もう着替えてもいいですか?」

「これから、2人のバランスを見たいそうだ」

旦那さんの方が先に制したが、奥さんは私の反応を見るので、頷いた。

「お2人の印象を見ながら小物を合わせていきたいと思います」



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