フルール・マリエ


旦那さんのシャツやブートニア、奥さんのアクセサリーやベールをイメージを広げてもらうために鏡の前で2人に並んでもらい、小物をいくつか合わせていった。

「あ、あの、私の小物なら、また後日私だけで来店させて頂けませんか?」

旦那さんのことに気を遣って言っているのだろう。

「2人の挙式だろう。合わせた方がいいじゃないか」

奥さんも娘すらも目を丸めて旦那さんを見つめる。

私だけは微笑みながら、奥さんのネックレスのフックを後ろから付けていた。

「夢だ、って言ってたな。忘れてたよ」

奥さんの瞳が濡れ始めていた。

30年を共にしてきた夫婦に私が何かできるかもしれないと思うこと自体おこがましかった。

長年連れ添った夫婦にしかわからない、固い絆に入り込む必要など、元々必要なかったんだから。



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