フルール・マリエ
「早まったかもしれません。クリスマスマジックに流されたんですよ、きっと」
「でも、その場でプロポーズを受けたんじゃなくて一回持ち帰って考えたんでしょう?」
口を尖らせながら不服そうに頷いた。
「だったら、この数日の言動で早まったって思うのはそれこそ早いんじゃない?一緒に住んでいて、良いところも新しく見つけたんじゃない?」
「ですけどー、嫌なところも見つけましたよ」
「そりゃあ、見つかるわよ。別の人間だもの。そういうところもひっくるめて愛しかったり、安心感って生まれるもんじゃない?」
記憶を巡らせているのか、牧さんはジョッキを見下ろしながら水滴を手で拭っている。
「朝見さん、彼氏と同棲してるんですか?」
「してないよ」
「結婚焦りません?その彼氏、付き合い続けて大丈夫ですか?」
「わ、私の話は今良くない?」
「いえ、聞きたいです。なんでそんなに余裕があるのか。ちゃんと見極めてから結婚に踏み込む方法を知りたいです」
「いや、牧さんはもう結婚したんだから、知る必要ないでしょ?」
「今ならまだ傷は浅いです」
「何の?」
「離婚の」
真剣な目は冗談を言っているようにも見えなかった。
私の想像を超えてくる恋愛をしてきただろう牧さんだ。
本当に実行しないとも限らない。
私の話でこの2人の離婚を止められるのか謎だが、乗りかかった船で、話せる範囲で何とか思い留まらせられないかと、牧さんの質問に答え始めた。