フルール・マリエ
「いっそのこと、どっちも着ちゃえば?」
新郎が軽いノリで発した言葉に、新婦が目をギラリとさせて、強い口調で言い返す。
「厳しいってプランナーさんにも言われたじゃん。そもそも新郎側から2組も余興って多いんだってば」
「やってくれるって言うんだから断るわけにいかないだろ」
「わかってるってばー。何回も聞いたし」
新婦は口を尖らせて、新郎から視線を逸らすと、新郎が更に言い返そうと身を乗り出した。
「ひとまず。もう一度、着てみませんか?」
何かを思いついたかのように手を叩いて無理矢理2人の言い合いを終了させて、ドレスの試着を促す。
期限が迫ってきて焦り始めたことと、決まらないことのもどかしさが配慮を欠いた物言いになってしまうのは、仕方のないこと。
楽しみながらドレスを選んでほしいのに、それができなくなってしまう無情な現実。
ドレス試着の後半戦に生まれる葛藤が、今回は色濃い気がする。
「緑の多い式場だから黄色は絶対映えると思うんですよ。この色合いも私好みだし」
イエローのドレスを試着しながら、改めて鏡でドレスをまじまじと見つめる。
「でも、あの薔薇のドレスは珍しいし、友達が見たらびっくりすると思うんですよね」
「イエローのドレスにお友達はどんな反応をするでしょうね?」
「うーん、やっぱりそういう色ね、って思うかも。私、黄色とかオレンジが好きだから」
「お友達に驚いてもらいたいですか?」
「驚いてもらいたいです。記憶に残る衣装がいいなぁって思います」