フルール・マリエ
特に気の利いた言葉もかけられず、私の家の前に到着してしまった。
その頃には小雨に変わっていた。
「思い出したんだけど、うちのおじいちゃんとおばあちゃんはお見合い結婚だったんだって。でも、今でもすごい仲良しなんだ。・・・だから、お見合いも悪いことばかりじゃないんだと思う」
「俺が聖の事、好きってわかっててお見合い進める?とことん傷つけるなぁ」
「ご、ごめんっていうのも変か。でも、やっぱり、私は千紘と付き合う事は考えられないから、他にも目を向けてほしい。それで、千紘が幸せになってほしいと思う」
持っていたブーケから1束白い花を取って千紘に差し出す。
「幸せのおすそ分け」
千紘は差し出された花を、驚いた様子で見つめている。
そして、何だか泣きそうな顔をして、そっと手を差し伸べてきて、私の腕を掴むと、そのまま自分の胸に引き寄せた。
「な、何してっ・・・!?」
「それはこっちのセリフ。無意識なの?だとしたら、結婚式に関わる者として失格」
「酷っ・・・、離して」
「やっぱり、聖がいい」
耳元で囁かれて、電気が走ったように体が痺れた。
「聖が俺を意識してるようにしか思えないし、妬いてるとしか思えない。ほら、俺ってナルシストだから」
「そんな、自覚いらないからっ」
肩を抱かれて、体が離れると頬に千紘の少しひんやりとする手が添えられる。
「俺の事をその気にさせてるのは聖にも原因があるってわかってる?」
だめだ、この目を見ていると何も考えられなくなる。
静かな車内の中に私の鼓動が響いているんじゃないかというくらい、胸が騒がしい。