君と描く花言葉。
そういえば今までは気にもしていなかったけど、ニゲラはなんて花言葉なんだろう?
よく考えたら私、全然ニゲラのことを知らない。
というか、今まで描いてきたもののことなんて、知ろうともしてなかった。
ただ形だけを描いて、ただ色だけを真似して。
そのものを見たことなんて、あったっけ?
セイジは当然のように『たくさん花を描くから、花言葉は知っている』と言っていたけれど。
私は描いた花の花言葉なんて知らないし、むしろ花の名前すら知らないことだってある。
……もしかして。
自分の世界って、他のものをたくさん知っていないと見えないものなの?
バッと制服のポケットからスマホを出して、検索欄に素早く文字を打つ。
ニゲラ、花言葉。
短く2単語だけを入れた検索欄は、すぐに次の画面を表示した。
「『困惑』……?」
ポツリと、目に入った単語を口に出す。
ニゲラの花言葉と言っても本当は1つだけじゃなくて、他にも『深い愛』『夢の中の恋』『不屈の精神』なんて花言葉もあるらしい。
でも、なぜだか私には『困惑』という言葉がしっくりきた。
……中学生の頃に見た、あの絵が原因だろうか。
あの絵には、今考えてみれば『困惑』が一番似合う気がする。
一見毒々しくて、繊細で綺麗で禍々しくて、ぐちゃぐちゃでいて整っている。
スマホをそっと机に置き、そのまま目を閉じる。