無知、時々天然な
そこまで言ってようやく。
 男は、ああ、と声をあげた。
「赤いのって、血のことか?」
 ”血”
 素敵な響きだと、心底思った。
「その...”血”ってやつ。私、欲しい」
 腹の底から声を絞り出す。興奮しているのか。胸の高鳴りを抑えるように、心臓辺りに手を添える。
「お前、付いて来い」
 男は私の返事も聞かず、後方のドアから出て行った。...男の後ろ姿が、酷く堂々としていた為か、或いは別の何かか。私は、男の後を追っていた。
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