大宮課長は今日もいじわる
真希ちゃんの楽しそうな声がしたので、
私はとっさに身構えてしまった。
「でね、点数はまあまあだったんだけど、
やっぱりテスト勉強はした方がいいなぁって…
あ、ゆずちゃん、ただいま」
「お、おかえり…」
私の心臓はドキンっと跳ねた。
リビングルームに入ってきたのは、
真希ちゃんだけではなかったのだ。
「よぉ、南」
「大宮課長!」
真希ちゃんの後ろから
現れたのは、大宮課長だった。
髪の毛がいつもよりラフな感じで、
新鮮だった。
「潤がどうしても来たいっていうから」
「え…」
私は大宮課長を見つめた。
そうだ…私が水本くんに捨てられて傷つくのを心配して、
川崎さんに相談してくれたんだよね…?
真希ちゃんが課長に
座りなよ、と
声を掛けた。
でも、課長はそうしなかった。
私が座っているソファーの横に突っ立ったままこう言ったのだ。
「真希、俺、もうやめる」