不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
濡れた前髪をグシャリと崩し、久遠くんはまた肩を落とした。このままではダメだ。落ち着いて話をしないと。

「久遠くん。座って?」

彼をベッドへと導くと、座らせて、私もすぐ隣にくっついて座った。
彼はつり上がっていた眉を今度はハの字に下げて、私を見ていた。

「ごめんね。久遠くんといると疲れるなんて、酷いこと言って……。傷付けちゃったよね」

すでに重なっていた手を握り直し、それを私の頬へと持っていく。大きな手の感触を味わうように、私はそれに頬を寄せた。

「本当は久遠くんのこと大好きだよ。……世界で一番」

彼は素直に顔を赤くしていた。わずかだが、瞳に光が戻ったことも見てとれる。
しかし、彼はとても賢い人だ。“大好き”という言葉で上書きしたが、彼に対して取った私の態度についてははぐらかしたままだと気づいてる。
だから何を言ったところで煮え切らない表情は変わらない。
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