不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
すると、今度は彼の指が私の前髪に触れた気がした。目を閉じているからはっきりとは分からないが、彼は私の髪やら耳を撫でている。これって、いつも私が久遠くんにしていることだ。

彼は前髪を撫でながら、壁際に向いていた私の顔を、自分の方へ向くように器用にずらした。
口にあてていた掛け布団も、顔の下まで寄せられ、彼の前に寝たふりの顔が露になる。

バレてない、よね。どうしよう、目を開けるタイミングを完全に逃してしまった。

ていうか、久遠くん、何してるの……?

「………美和子っ……」

熱っぽく名前を呼ばれたかと思うと、薄く呼吸だけをしていた唇に、湿ったものが押し当てられた。
唇より先に彼の吐息が当たったため、私はゾワリと身を震わせ、そこへすぐ当てられた唇。
キスをされているのはすぐに分かったが、混乱は大きかった。

「んっ……」

思わず声を漏らすと、押し当てられている唇は素早く離れた。
驚きと、すでにこの時点で込み上げている喜びが止まらなくて、目を開けようかとも思った。しかし寝たふりを続行してこの続きを知りたい、ほんの一瞬でそれを決めたため、わずかに瞼が動いただけで、私はまだ彼に無防備な寝顔を向け続けた。
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