雪の光


夜遅かったけれど、走った。


確認せずにはいられない。


これを逃したら、きっともう二度とない。


パンプスで走ることはもう慣れた。


とにかく急いだ。


封筒とメモだけ持って。


道は覚えている。


この角を曲がれば、アパートに着く。


階段を駆け上がり、インターホンを鳴らす。


懐かしい、独特のメロディだ。


「……入って」


ドアを開けた茜ちゃんもスーツ姿だった。


私達、もうこんな年齢になったんだと場違いに思う。


「早く入りなよ」


「お邪魔します……」


廊下を歩くと、何年か前と同じように茜ちゃんのお母さんがテレビを観て笑っていた。


ここだけは時間の流れが止まっているみたいだった。


制服がスーツに変わったことを除いて。


「……これ、渡し忘れてた」


気まずそうに紙切れを差し出す。


でもその紙の材質を私はよく知っていた。


「……彗、の……?」


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