セレブ結婚の甘い落とし穴【完】

春の生暖かい爽やかな風が海の波風と相まって、私の心を魅了する。

「うーん、いい匂い、気持ちよい、最高」


「奏音、海も好きなんだ」
翼がふと目の前に現れた。

「き、聞こえてたの？」
思わず、顔を赤らめる。


「もっといいとこ、連れてってあげる」

そう言うと、翼は私の右手をぐいぐい引っ張って、砂浜を歩き、真っ白な豪華な別荘らしき階段の前に私を連れて来た。


「おいで、昇れる？」


「あ、はい、大丈夫です。ここは？」


「危ないから、先に昇って」
翼は、私の質問を軽くスルーしながらも、見守るように優しく私を支えてくれた。


長い階段の頂上まで来た時、後ろを振り返ると、里穂と玲於が、遠くで楽しそうにじゃれ合っているのが輝いて見えた。


「あ、あの2人は？」


「後で来るから、大丈夫」


そう言うと、翼は、欧風調の白い大きな扉を開けた。