水月夜
そこまで言ったところでじわっと涙を浮かべた。


そして涙がポタポタと机の上にこぼれる。


ここで私が泣くとは思わなかったのか、雨宮くんがギョッと目を見開いた。


「か、柏木⁉︎ どうしたんだよ、なんで泣くんだよ」


「直美に本当のこと言うのが怖かったんだもん。それに、直美に嘘ついちゃったから……」


涙がポロポロとこぼれているせいで、うまく言葉を出せない。


しかし、言わなければ伝わらないので、詰まらせながらもなんとか言葉を返した。


メイクが崩れてしまうのもおかまいなしに指でまぶたを優しくこする私に、雨宮くんが中腰の姿勢で私の顔を覗いた。


その顔はなぜか悲しそうだ。


「そんなことで泣くなよ、柏木。柏木が泣いてたら俺まで泣きそうなんだけど」


やけに苦しそうな声が耳に響いた瞬間、涙をぬぐっていた手を止めておそるおそる顔をあげた。


下唇を噛みしめ、目尻には透明な水滴がある。


どうして雨宮くんまで泣きそうになっちゃうの?


雨宮くんが泣きそうになる理由がわからず、ただ首をかしげて疑問を口にするしかない。
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