水月夜
「なんで? なんで私だけじゃなくて、雨宮くんまで泣く必要があるの? 私のこと、ただのクラスメイトとしか思ってないんじゃないの?」


私が涙をまぶたを指でこすっている姿を見るだけで、なぜ雨宮くんも泣きそうになるのか。


心の中で思った疑問はそれだけのはずなのに、最後のひとことは余計だった。


自分でも『ただのクラスメイトとしか思ってないんじゃないの?』と聞いたことを後悔している。


慌てて目をそらし、「ごめん、忘れて」とつぶやくが、雨宮くんは口をつぐんで返事をしようとしない。


どうしてなにも答えないの?


さらに疑問に支配された私の質問に答えたのは、5限のはじまりを知らせるチャイムだった。


チャイムが鳴ったと同時に雨宮くんは逃げるように自分の席に戻り、席を離れていた他のクラスメイトがそれぞれ自分の席に着いた。


5限の授業開始のチャイムが鳴ってから数十秒後、ヒロエと紀子がなにごともなかったかのように教室に戻ってきた。


だが、千尋の姿は見えなかった。


千尋の居場所をヒロエと紀子に尋ねようとしたが、5限の授業担当の先生が現れたので聞けなかった……。
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