水月夜
うしろに退けた片足をなんとか前に進ませて、直美の視線を正面から受け止める。


「梨沙……」


「…………」


「よくも……よくも私を、こんな目に遭わせたわね……」


黙り込む私に言葉を続けた直美のセリフに疑問を覚えた。


『よくも私をこんな目に遭わせたわね』


直美の言う『こんな目に遭わせた』というのは、いったいどういうことだろう。


首をかしげて、思っていることをそのまま直美にぶつけた。


「こんな目ってどういうこと? もしかして私のせいなの?」


すると、直美がつかつかと早歩きで私の目の前までやってきて、私の上着の襟を掴んできた。
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