水月夜
また顔が真っ赤になって、雨宮くんの名前を呼んだ私。


その声が聞こえたのか、雨宮くんは私をかばうように片手を広げた。


「梨沙とどんな関係なのかは知らないけど、もし梨沙に手を出すようなことがあったら許さない」


雨宮くん……!


正義のヒーロー風の言葉を堂々と人前で言う雨宮くんは、今まで見てきたなかで一番カッコよく見えた。


まぁ、雨宮くんはいつでもカッコいいけど。


嬉しすぎてなにも言えない私を、久保さんは一瞬だけ見て、雨宮くんのほうに視線を戻した。


「手なんか出さないわけないでしょ。梨沙ちゃんが君の言葉を聞いて、顔を真っ赤にするところを見たら」
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