水月夜
どうしよう。


豊洲さんと仲がいい千尋はまだ来ていない。


慌てる私を見て、直美と言い争いをしていた雨宮くんが無理やり会話を切りあげてこちらに駆け寄ってきた。


「豊洲、大丈夫か? 念のため保健室に行ったほうがいいな。柏木、豊洲を保健室に連れてくぞ」


駆け寄ってきたと同時に雨宮くんに声をかけられるとは思ってなくてびくっと肩を震わせたが、こくんと小さくうなずいて返事をした。


「う、うん」


私の反応に、なぜか落ち着いた様子を見せる豊洲さん。


豊洲さんの表情に気づかないフリをして、直美とヒロエと紀子の様子を見た。


ヒロエと紀子は苦しそうな表情のままで、直美はつんとした表情がまるで嘘のように口を開けてポカンとしていた。


今が豊洲さんを連れだすチャンスだよね。


自分の席にカバンを置き、早歩きで雨宮くんと豊洲さんのもとへと歩いていく。


うしろからザワザワと騒ぐ声が聞こえてきたが、それを振りきるように保健室に向かった。
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