ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「小春。俺は、君が好きだ」

 颯馬さんは力強く囁く。

「ずっと好きだった」

「嘘です。そんなわけ……」

 私は唇を震わせた。

 だって。颯馬さんには――。

「本当だ。初めて君を見て、それから社内で偶然再会して、好きになるまでそう時間はかからなかった」

 偶然、再会?

 思わぬ言葉の登場に、いささか呆気に取られる。

「でも、颯馬さんには好きな人が……」

「だから、それが小春だ」

 戸惑う私に、颯馬さんはきっぱりと言い放った。

 本当に? けれど、相手は社外の結婚の難しい人だって……。
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