ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
やってきたのは、先ほどの駅からふた駅分ほど離れた場所にある、日本の歓楽街の中でも有名な場所の内のひとつだ。ここから先は別世界と言わんばかりにかまえているネオンサインのたくさんついた門。朝の光が輝かしい中でも、ここの空気はどこか夜の匂いを感じさせる。
心の準備をする時間が欲しくて歩いてきたけれど、やはり緊張する。深く息を吐き出した。私は意を決して、ゲートの中へと足を踏み入れる。
安易な考えかもしれないが、多額の借金を返すには、夜のお店で働くしかないと思った。一般的な日中の仕事よりもお金が多く稼げる。こういった場所に来たことがない私でも、テレビなどの影響のせいかそんなイメージがあった。
もちろん簡単な仕事ではないし、私に務まるかはわからない。それでも、もうなりふりかまっていられないのだ。
酔っ払っているのか、電柱にもたれ掛かるようにして眠っているサラリーマンの男性を尻目に、華やかな店の看板たちを眺めていく。
ガールズバーに、キャバクラ。店ごとに結構募集の張り紙が貼ってある。
しかし、読み進めていくと、このふたつの職種では利息分は払えそうになかった。