蛍火
第1章
村の真上に太陽がさしかかった今では気温は高くなる一方で、青年は自転車をこぎながらため息をついた。
彼は、あぁ、本格的な夏になってくるなとあまりの蒸し暑さに悟ってから、冷たい物が食べたいなとふと思う。

今日はここ最近の中でも特に気温が高かった。そういえば棚にそうめんがあったはず、と、数日前に街へ出たときに買い物をしたことを思いだした。そうだ、今日の昼は冷たいそうめんにしようと首筋に伝う汗を拭い、そうと決まればと、ぐんと足に余計力を込めて青年は砂利道を駆けた。

あぜ道にも近い、石ころだらけの道だ。見渡す限りの畑や田んぼに何げなしに目を向けたとき、自転車のタイヤが弾き飛ばしたらしい小石が田んぼへと落ちた音が聞こえた。遮るものが何もないせいで照りつける太陽の光が、肌さえ通り越し直接骨まで焼かすようで。
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