今でもおまえが怖いんだ
私より少しだけ背の高い梓紗さんと肩を並べながら、彼の歩調に合わせて早足になる。

「俺がいるじゃん」

フードコートを突っ切る時、そう言われた。

「そんなに寂しくさせてるつもりないんだわ、こっちは」

うん、うん。私は頷きながら梓紗さんに置いて行かれないように歩幅を大きくする。
この人、こういうところはあるよなあと思うけれど、だからと言って寂しくなるわけではけしてない。

「じゃあ、手ぇ繋いでよ」

追いかけながら私が言うと、立ち止まって振り返った彼は「やだけど」と言いながらわざわざ両手をパーカーのポケットに突っ込んだ。
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