さざなみの声
ドレス


 みゆきの結婚式に何を着ようか。

 それは、お出かけする行事、予定が出来た時、女性にとって最大の悩みでもあり最高の楽しみでもある。

 どんな場所でも自分に自信を持って華やかな笑顔で居られる。私は、そんな服を作りたくてデザイナーを志望した。

 有名なコレクションのファッションショー。それは素敵ではあるけれど……。あれは所謂カリスマモデルと言われるパーフェクトなプロポーションの持ち主だからこそ、うっとりするくらい綺麗に着こなせる物であり一般の普通の女性たちのための服とは言い難い。

 そうだった。日々の忙しさに紛れてデザイナーを志した気持ちすら忘れかけていた。

 みゆきと別れてアパートに着いてシャワーを浴びながら、そんな事を考えていた。髪を乾かしながら、どんなヘアスタイルにしようか。

 十月なら、お振袖っていう手もあるけれど……。あんなに高い金額を掛けてもらって成人式に一度着ただけ。しかも着物は実家に置いたまま。送ってもらおうかとも考えたけど、着付けも髪も美容院に行かなければならない。却下だな。

 この先、デザイナーになれるかどうかも分からない。でも自分のために思い通りのドレスを作ることは出来る。今まで学んで来たことも無駄にはならない。そういう生き方をすることだって意味はある。私が私専属のデザイナー。それも良いかもしれない。
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