さざなみの声

7


 六月になった。麗子から届いていた披露宴の招待状の返事も出した。六月の最後の日曜日に式を挙げる。

 学部も違ったのに何故か仲の良かった三人。これで私だけ売れ残るんだ。学生時代に一番早く結婚しそうだと言われていた私が。人の運命なんてどこでどうなるのか分からない。そもそもどれが運命だったのか知る方法もないけれど。

 一週間ほど経って、夜、啓祐からの着信。

「はい」

「寧々、本当にあれが今の君が描く最高のデザインなのか?」

「えぇそうです。あれが私の出来るすべてです。自分でもよく分かりました。私はデザイナーには向いてない」

「少しくらいの事なら、なんとか根回しして、とりあえず二十名の中には入れるつもりでいたのに……」

「あれでは推薦出来ないですよね。よく分かってます。私のことはもう放って置いてください。じゃあ切ります」

「寧々……」

 啓祐の言葉を遮って私から電話を切った。もう私なんかに関わってくれなくていいのに。あれでデザイナーなんかになれっこない。自分でも自信のあった五枚を抜いて可もなく不可もなし、そんな五枚を入れて送った。きっと問題外で最初に撥ねられるだろう。それは分かっていた。啓祐にも諦めてもらいたかった。
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