さざなみの声

8


 次の日曜日にシュウが店に現れた。

「あら、シュウ君だったかしら。いらっしゃい」

「はい。こんにちは。寧々は?」

「今、お得意様のところへお届け物に行ってもらってるの。あと三十分もすれば帰ると思うけど」

「そうですか。あぁ、この前の母の日のプレゼントも、すごく喜んでもらえました。ありがとうございました」

「そう、良かったわ。お礼を言うのは私たちの方よ。そうだシュウ君、寧々ちゃんの学生時代の友人だったわよね」

「はい。そうですけど」

「こんなこと君に言っていいのかどうか……」

「何ですか? 寧々に何かあったんですか?」

「このところ寧々ちゃん少し変なのよ」

「変ってどう変なんですか?」

「仕事でミスをするとかじゃないんだけど。時々何か考え込んでるみたいなの。寂しそうな顔してる事が多くなったような気がするのよね」

「今、付き合ってる人が居るみたいですけど、その人と何かあったんでしょうか?」

「どんな人なのかシュウ君は知ってるの?」

「いいえ」

「上手くいってないのかしらね。その人と」

「そういえばデザインコンテストって、もう結果出たんですか?」

「一次を通過したら今月中には本人に連絡があるはずだけど」

「気に入るものが描けなかったんだろうか」

「そういえば一度聞きたかったんだけど。単刀直入に聞くけどいいかしら?」

「何ですか?」

「寧々ちゃんとは、本当に、ただの友人なのかな?」

「えっ? それは……。寧々には言わないでもらえますか?」

「もちろんよ。私、口は堅いつもりだけど」

「実は学生の時、寧々と付き合っていたんです。三年間」

「やっぱり。元カレなんだ。で今はどう思ってるの? 寧々ちゃんのことを」

「幸せになって欲しいって思ってます」

「君が幸せにしてあげるんじゃなくて他の人でいいの? 今でも好きなんでしょう? だから時々会いに来てる」

「それは……」

「とにかく今、何か悩んでいることは確かなの。君なら寧々ちゃんを助けてあげられるんじゃないかなと思って」
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