さざなみの声


 夜中に目を覚ましたシュウは腕に抱いた寧々の寝顔を見詰めていた。十九歳の寧々を初めて抱いた時、生涯守ると誓ったこと。その誓いが守れなくなって苦しんだ日々。その寧々が今この腕の中に居る。やっと僕のところに戻って来てくれた。それだけで幸せだった。今度こそ生涯、寧々の傍に居るから守るから。寧々の寝顔が綺麗で可愛くて

「反則だよ」

 そっとキスした。

     *

 いつの間にか夏の明るい陽射しが窓いっぱいに輝いていた。先に目を覚ましたシュウは飽きずに寧々の寝顔を見ていた。

「うん? シュウ、もう起きてたの?」

「あんまり幸せ過ぎて眠れなかったんだ。寧々が可愛くて可愛過ぎて……」

「嘘吐き」

「嘘じゃないよ。いくらでも証拠は見せられるよ」

「どういう風に?」

「こういう風に……」

 昨夜シュウに愛された姿のままで何も身に付けていない。その肌にシュウは優しくキスを落としていく。

「シュウ……ダメ……」

 無駄な抵抗だと解っていたけれど。

「そんな可愛い声でダメって言われても、もっととしか聞こえないよ」

 そのまま寧々の透き通るような白い肌は綺麗な薄紅色に染められていった。
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