このままずっと離れないで
***

「ほんと望(ノゾミ)と亮(リョウ)は仲良しね〜。」

今日の登校風景を覗き見ていた朱美(あけみ)が
まだ授業もはじまっていないと言うのに
昼用のパンをかじったまま口元を緩ませる。

「幼馴染だもん。」

その何度聞いたかわかない''仲良しだね''
という言葉に私はいつもテンプレのように
そう返すだけ。

実際、それ以上の関係でもないし。

ただ歳を重ねるにつれて
''幼馴染み''
その言葉が重みを増していくのには
少なからず気づいていて。

「いやいや、でもさすがに
手繋ぎながら登校は幼馴染みでもなかなか
やらないでしょ〜。」


「まぁー、りょーくんが変わってるのよ。
繋ぎたいって言うんだもの。」

だからやっぱり
この歳にもなって恥ずかしげもなく
私の手を取るりょーくんに
何も思わないわけもなく。

「実は恋しちゃってるのかもよ〜?」

''あっちが''
なんて一言つけ加えた朱美に
内心ドキリとする。
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